株式会社QRインベストメント

更新日:2025年12月17日

「地域から世界をより良いものに:前田さんが描くビジョナリー・リージョン」

今回のインタビューでは、CCIグループ(旧北國フィナンシャルホールディングス)の投資専門会社である株式会社QRインベストメント(以下、QRI)に所属する前田英史さんにお話を伺いました。
理系出身で、福井県の企業を皮切りにこれまでキャリアを積まれてきた前田さん。東京と地方での幅広い職務経験に裏打ちされた独自の視点と地域発ベンチャー企業の成長に対する熱い思いに触れ、今後どのように地域の活性化に取り組まれていくのかを探ります。

【加賀市スタートアップ特区座談会(2025年11月11日開催)での講演の様子】

 

前田さんはQRIに所属されていますが、入社されるまでのご経歴と現在の業務について教えてください。

私はもともと理系出身で、福井県の企業で研究開発職としてキャリアをスタートし、土木資材の開発に携わっていました。30代で東京に転勤となり、そこで初めて転職を決意し、東京のベンチャーキャピタル(以下、VC)業界に入りました。
その後、地方銀行系のコンサルティング会社に転職し、主にVC業務を担当していました。そこではファンドの立ち上げから運営、投資先に対するコンサルティング業務に加え、県のエコシステム構築、ピッチ選考委員や指導員、大学の非常勤講師なども兼務していました。
現在所属するQRIには2023年8月に入社しました。QRIでは、前職での経験を生かして、投資先発掘を始めとしたファンド運営業務、産学官連携のご支援等を行っています。

 

QRIに入社されて、前職とCCIグループとの違いは感じましたか?

CCIグループは、地方銀行としては比較的珍しい持株会社制を採用し、銀行とグループ各社が横並びの関係になっているため、自由度が高く、独自の動きがしやすいと感じます。CCIグループの成長戦略の図を見て、これまで自分が地方ベンチャー企業への指導で使ってきた図と全く同じだったことも転職の決め手になりました。グループ全体で成長を目指す姿勢に共感し、今後の展開に期待しています。

 

東京と地方とではVC業界を取り巻く環境にも大きな違いがありそうですね。前田さんが実際に感じられた良い点・悪い点はありましたか?

一番の違いは「情報量」の差ですね。やはり東京は日本の中心だけあって情報がとても豊富で、さまざまな企業やサービスの事例に触れる機会に恵まれています。ネットワークは広がりやすいですが、その分浅くなってしまう傾向があると思います。
一方で、地方はコミュニティが小さいながら、濃いネットワークが築けるのが強みですね。ただし、情報が限られがちで、外部の新しい情報が入りにくい面もあります。
地方の企業は真面目に事業に取り組む方が多く、地方の厳選された企業は東京の企業に引けを取っておらず、事業の中身次第では十分勝負できると思います。あとは東京並みの情報を得てうまく活用できれば、日本から世界へとさらなる躍進も期待できると感じています。今後は地方の企業が新規上場するチャンスも増えていくのではないでしょうか。

 

地方と東京との情報格差をいかに埋めていくかが重要なのですね。前田さんは様々な場面で投資を経験されていますが、投資判断にあたって一番重視するポイントは何でしょうか?

最も重視するのは「社長さんご本人」ですね。事業計画だけでは判断せず、数年かけて付き合いながら、この人なら任せられると思えたタイミングで投資を決めます。
東京のVCでは、3~4年かけてじっくりと信頼関係を築き、社長の考え方や事業の進捗状況、社長自身の人柄を見極めてから投資するのが一般的なんです。ベンチャー企業の事業計画は環境変化に応じて変わることも多いので、最終的には「この社長ならやりきってくれる」と思えるかどうかが判断基準になります。

 

人としての信用が大事ということですね。当地でも起業を検討されている方もいらっしゃると思います。前田さんのご経験を踏まえてのアドバイスはありますか?

起業は社長業になるので、例えば研究者の方が会社を立ち上げると、自分のしたい研究より経営に関する業務に多くの時間を割かざるを得なくなることとも考えられます。独立起業だけがベンチャーではなく、社内ベンチャーや子会社設立など、安定性を保ちながら新しいことに挑戦する方法もあります。地方では特にこの形が合っていると思います。
既存企業の中で新規事業を立ち上げたり、社内ベンチャーとしてチャレンジすることで、リスクを抑えつつベンチャーマインドを育てることができます。最初から独立を目指すのではなく、まずは社内で新しいことに挑戦するのも一つの方法ですよ。

 

                                                         【イノベーションセンターでの様子】

 

加賀イノベーションセンターに入居されましたが、当施設への要望はありますか?

コワーキングスペースが充実していて、VCや支援者が普通に座って仕事をしている環境がすばらしいですね。福岡のインキュベーション施設でも同様の話があり、日常的にVCや支援者がいることで、起業家が気軽に相談できる環境が生まれています。部屋にこもるよりも、コワーキングの一角で仕事をし、気軽に相談できる雰囲気づくりが大事だと思います。
今後は1時間程度のショートセミナーや座談会など、情報提供の場をこまめに設けてほしいですね。こうした場があることで、参加者同士の交流や新しいアイデアの創出につながると考えています。

 

編集後記
インタビュー中、前田さんの地方発ベンチャー企業の萌芽と成長への期待に対する温かいまなざしがとても印象的でした。地方と言えば、少子高齢化や担い手不足等、先行きに対する暗い話題ばかりが聞こえてきますが、コミュニティマネージャーとして、前田さんのような熱意ある方とともに地域を盛り上げたいという思いを改めて強くしました。入居者の皆様もぜひお気軽にお声がけいただければと思います。
(コミュニティマネージャー 谷内大輔(株式会社CCイノベーション))

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