GH Advancers株式会社

更新日:2025年12月25日

地域こそ未来:谷口さんが描くサステナブルビジョン」

今回のインタビューでは、スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2024で最優秀起業家賞を受賞されたGH Advancers株式会社(本社所在地:石川県加賀市)代表取締役 谷口敬太氏にお話を伺いました。彼の会社が手掛ける「超高効率光合成微生物培養装置(フォトバイオリアクター:PBR)」は、エネルギー効率とスペース効率において画期的な技術であり、医薬品や食品など多岐にわたる分野での活用が期待されています。谷口さんの独自の視点と情熱に触れ、その技術がいかにして誕生し、今後どのように発展していくのかを探ります。

 

スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2024の最優秀起業家賞をご受賞されました「超高効率光合成微生物培養装置(PBR:フォトバイオリアクター) の開発・製造・販売」について概要を教えていただけますか?

フォトバイオリアクターの「フォト」は光の意味で、フォトバイオリアクターというと基本的には、光合成装置、つまり光合成する微生物を培養し物質を生成する装置のことをいいます。様々な物質生産の根幹になるものなので、「夢の装置」と言われてきました。光合成微生物(微細藻類)が光と二酸化炭素を使っていろいろな物質を生成するのですが、生成できる物質は幅広く、医薬品、化学工業材料、食品、飼料、肥料などあらゆる分野での活用が期待できます。これまで実用化されているものは広大な土地を必要としたり、大きな空間を必要としたりします。当社の装置では、容積効率が数百倍以上、エネルギー効率が10倍以上の生産性を実現できます。

 

                            【スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2024での一場面】

(出典:石川県産業創出支援機構HP https://ishikawa-startup.jp/bijicon/award/1509/)

 

光合成する微生物とは、具体的にはどのような微生物ですか?

海苔や昆布やワカメは藻類といいますが、藻類にはさらに小さな藻類、微細藻類(びさいそうるい)という微生物がいます。たとえばクロレラやスピルリナ、ユーグレナ(ミドリムシ)などが知られているところでしょうか。地球上の酸素の半分以上は微細藻類由来、また化石燃料も微細藻類由来といわれていたりもします。また微細藻類は何万種類も存在するといわれていますが、光合成する微生物の総称です。理論的には鉱物以外のあらゆる物質を生成できる可能性があります。

 

光合成微生物ってすごいですね!知りませんでした。谷口さんがフォトバイオリアクター事業をはじめようと思ったきっかけは何ですか?

もともとはIT関連の事業を幾つか手掛けてきましたが、結婚して子供にも恵まれるなかで、この子供たち世代、さらにその先の人類のために、地球の未来のために何かできることはないか、と漠然と考えるようになりました。

たまたま私の大学時代の師匠である武藤佳恭教授はAI(ニューラルネット)の第一人者の方でしたが、コンピュータサイエンスの分野に限らず、化学工学や建築、様々な分野のジャーナルに論文を掲載していらっしゃる先生でした。武藤先生とは卒業後も頻繁にお会いしていましたが、2018年頃に出された論文を読んでいく中で、合成生物学関連の情報にたどり着きました。

自分なりに調べていくと、高効率なフォトバイオリアクターがあれば、人類・地球上のかなりの問題を解決できるのではないかと考えるようになりました。同時に過去の技術の様々な課題も整理できてきました。

人間が月や火星で生活できるようになることも計画されていますが、宇宙基地はでは生物が出す二酸化炭素から、様々な物質をつくらなければいけないことから、宇宙基地分野でも中核な技術として知られています。ただ、フォトバイオリアクター事業を開始しようとした矢先に、新型コロナウイルスのパンデミックが起こりました。私のなかで、信用できるウイルス分解できるシステムが世の中になかったため、急遽、フォトバイオリアクター技術につかった発想を応用して、ウイルス・微生物の高効率分解装置をつくったりもしていました。生物兵器対策用としても使えるレベルのものを製作したので、性能はかなり良いです。インフルエンザも、コロナウイルスはもちろん、芽胞菌などまでカバーできる設計にしてあります。微生物分解装置のサンプルは、大同ゼネラルサービスさんのショールームに展示させて頂いていますので、是非ご覧頂ければと思います。

 

谷口さんはどんなお子さんだったのですか?

兼業農家の家で、豊かな自然環境に囲まれて育ちました。子供の頃から、体を動かすことが好きでした。とくに野球や相撲が好きで、野球は高校まで続けました。大学は、慶應義塾大学の環境情報学部というところにたまたま入学できました。大学で、武藤佳恭先生と出逢い、とにかく様々な分野の勉強をさせて頂く機会に恵まれました。大学卒業時に創業した会社の社名を考えるときに、石川県に由来した社名にしたいと思い、加賀藩前田家の"前”を音読みし「ぜん」、"田”を訓読みし「た」として、「ZENTA」という社名にしたりもしました。故郷へ想いが強い方かなと感じます。

 

今後、フォトバイオリアクターで新しい世界を創出していこうとしてらっしゃるわけですが、これから5年後、10年後の事業ビジョンをお聞かせください。

事業ビジョンもそうですが、それよりも、まずは我々が、この地球を永続できるような道筋をつくることが第一かなと考えています。そのためのヒントは、月や火星でつくろうとしている「宇宙基地構想」に凝縮されていると考えています。宇宙基地は、その空間のなかで物質循環を行わないといけません。そのような概念をCELSS(Closed Ecological Life Support System)と言います。閉鎖型環境生命維持システムとでも訳したほうがいいでしょうか。このCELSSの発想は、建築や未来のまちづくりやも活かせるものですので、PBRは、CELSSの中核部分ですが、その他に開発していったアプリケーションは、どんどん地球上に応用していきます。

これらを実現するためにまずは、当社のフォトバイオリアクターの量産体制を構築したいと考えています。量産体制が整い次第、事業拡大をすすめるのですが、当社のみで完結させるのではなく、企業や国などへのライセンシングで事業をひろげていきます。当社はコアの製造技術と知的財産を保有し、フォトバイオリアクターを使いたい企業に提供することでライセンスフィーをいただくビジネスモデルです。ライセンスについては、独占的なライセンシングではなく、国や地域、カテゴリ別にライセンシングをおこないます。場合によってはジョイントベンチャーやM&A等も視野に入れたいなと考えています。

 

                                                                                  【北國銀行産業振興財団表彰式より】

 

これからの谷口さんのご活躍は大変楽しみです。これまでの技術の研究開発からビジネスモデルの構築、今後の事業プランの策定と実行をとおして、谷口さんにとっての「軸」や「こだわり」について教えてください。

一番は、「地球上での宇宙基地づくり」、地球上での「地域単位でのCELSSの実現」です。地球も宇宙の中の一部なので、地球上に1号宇宙基地があっても良いです。物質循環を啓蒙できる機関にもなると思います。つまり、できるだけ最小単位で、物質が循環する環境をつくりあげたいということです。宇宙基地技術をまちづくりに応用していきたいです。

 

地域というのは石川県や加賀をイメージしてらっしゃるのですか?

はい。まだ両親が元気なので、両親のいるそばで、生まれ育ったところの近くでやりたいなという思いが強いのかなと思います。加賀市イノベーションセンターに拠点をおかせていただいているのも、そういった理由からです。試作品を製作する際にものづくりルームが使えたり、自宅が近いという事もあって、ものすごく使い勝手がいいです。

 

同じ石川県民として、そう言っていただける起業家がいらっしゃることが、大変誇らしいです。最後のご質問ですが、これから起業をめざす学生の方など若い世代の方々にメッセージをお願いします。

私は「起業家」だと思ったこともなく、起業家の方々に向けて何かを語れるような人間でもないのですが・・。私はふと、「自分はなぜ地球に生まれてきたんだろう」と思うことがあります。そういうことを考えていると、そのときの自分の状態にピュアな答えが浮かんできたりすることがあります。身近に感じた疑問とか、目の前の問題に対し、どうやったら解決できるか、ということを常に考え続けることが大事であり、その積み重ねが皆さんの未来につながるのではないでしょうか。

とにかく、私はまだ皆さんに何かを語れるような身分ではありませんので、構想を着実に形にして、石川・北陸は熱い!と未来の希望を感じてもらえるようにしていきたいと思います。一緒に盛り上げていきましょう!

 

編集後記

本インタビューを通じて、谷口さんの情熱とビジョンが鮮明に浮かび上がりました。地域への深い愛情と持続可能なビジネスモデルへのこだわりは、未来の起業家たちに大いに刺激を与えることでしょう。彼の壮大なビジョンと具体的な行動力に、これからも注目していきたいと思います。(コミュニティーマネージャー 佐々木浩二(株式会社CCイノベーション))

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