GH Advancers株式会社

更新日:2025年12月17日

「地域から未来へ:谷口さんが描くサステナブルビジョン」

今回のインタビューでは、スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2024で最優秀起業家賞を受賞されたGH Advancers株式会社(本社所在地:東京都渋谷区)代表取締役 谷口敬太氏にお話を伺いました。彼の会社が開発した「超高効率光合成微生物培養装置(フォトバイオリアクター)」は、エネルギー効率と生産性において画期的な技術であり、医薬品や食品など多岐にわたる分野での活用が期待されています。谷口さんの独自の視点と情熱に触れ、その技術がいかにして誕生し、今後どのように発展していくのかを探ります。

 

この度はスタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2024の最優秀起業家賞ご受賞おめでとうございます。今回の「超高効率光合成微生物培養装置(フォトバイオリアクター) の開発・製造・販売」について概要を教えていただけますか?

はい、ありがとうございます。フォトバイオリアクターとは光合成する微生物を培養し物質を生成する装置ですが、光学系分野では「夢の装置」と言われています。微生物が光と二酸化炭素を使っていろいろな天然物質を生成するのですが、生成できる物質は幅広く、医薬品、化学工業材料、食品、肥料などあらゆる分野での活用が期待できます。これまで実用化されているフォトバイオリアクターは広大な土地や、大きなエネルギーを必要としていますが、当社の装置では、容積効率が数百倍以上、エネルギー効率が10倍以上の生産性を実現できます。

 

                            【スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2024での一場面】

 

光合成する微生物とは、具体的にはどのような微生物ですか?

昆布やワカメは藻類といいますが、藻類には微細藻類という小さな藻がいます。たとえばクロレラやユーグレナ、いわゆるミドリムシですね。地球上の酸素の半分以上は微細藻類由来といわれています。また微細藻類は何万種類も存在するといわれているので、いわゆる鉱物以外のあらゆる物質を生成できる可能性があります。

 

光合成微生物ってすごいですね!知りませんでした。谷口さんがフォトバイオリアクターを研究しようと思ったきっかけは何ですか?

もともとはIT関連の事業をしていたのですが、産業構造を変えられるような事業をしたいと思っていました。私が通っていた大学の研究室の先生はAI分野の方でしたが、化学・工学分野の研究もさせていただけました。フォトバイオリアクターと出会ったのもこの研究室で、この技術は人類・地球上のかなりの問題を解決できると知り、光学分野の勉強を開始しました。たまたま石川県の同級生が宇宙開発関連の事業に携わっていて、宇宙環境では人間が出す二酸化炭素で物質を作らなければいけないことから、夜な夜な宇宙基地構想を語り合っていました。他にも温度差発電装置をつくったり、光の技術を使ったウィルス滅菌装置をつくったりしていました。

 

いろいろな研究をされていたのですね。谷口さんはもともと研究好きなお子さんだったのですか?

はははっ そんなことないですよ。子供の頃は体を動かすのが好きで、野球や相撲をしていました。大学の学部を選ぶ時も、特にやりたいことがなかったので、学際的な学部ということで慶應義塾大学環境情報学部を選びました。ただ近所の親戚が工場を経営していて、小さいころ、ものづくりの現場で働く姿をみているうちに「将来こういう会社をつくれないかな」と憧れていた記憶があります。実は、大学卒業時に創業したAI開発会社の社名を考えるときに、石川県に由来した社名にしたいと思い、加賀藩前田家の前を音読みし「ぜん」、田を訓読みし「た」として、「ZENTA」という社名にしました。故郷への思いは強いですね。

 

今後、フォトバイオリアクターで新しいビジネスを創出していくわけですが、これから5年後、10年後の事業ビジョンをお聞かせください。

当社のフォトバイオリアクターには極秘の中核技術があるのですが、まずはその技術の量産体制を構築したいと考えています。量産体制が整い次第、事業拡大をすすめるのですが、当社のみで完結させるのではなく、ライセンシングで事業をひろげていきます。当社はコアの製造技術と知的財産を保有し、フォトバイオリアクターを使いたい企業に提供することでライセンスフィーをいただくビジネスモデルです。ライセンスについては、独占的なライセンシングではなく、国や地域、カテゴリ別にライセンシングをおこないます。場合のよってはジョイントベンチャー設立もありえます。また技術開発では、バイオファウンドリ(ロボティクスやAI技術を用いて微生物開発から実用化までを高速におこなう企業)との連携も検討しています。5年後には売上1000億円を計画しています。

 

                                                                                  【北國銀行産業振興財団表彰式より】

 

これからの谷口さんのご活躍は大変楽しみです。これまでの技術の研究開発からビジネスモデルの構築、今後の事業プランの策定と実行をとおして、谷口さんにとっての「軸」や「こだわり」について教えてください。

一番のこだわりは「地域単位でのサステナビリティの実現」です。地域のなかで循環するビジネスをつくりたい、競争力のある強靭な地域づくりに貢献したい、という考えが根底にあります。

 

地域というのは石川県や加賀をイメージしてらっしゃるのですか?

もちろんそうです。国内の他地域や海外から声はかかりますが、やはり生まれたところでやりたいな、という思いが強いです。加賀市イノベーションセンターを活用させていただいているのも、そういった理由からです。試作品を製作する際にものづくりルームが使えたり、自宅が近いという事もあって、ものすごく使い勝手がいいです。

 

同じ石川県民として、そう言っていただける起業家がいらっしゃることが、大変誇らしいです。最後のご質問ですが、これから起業をめざす学生の方など若い世代の方々にメッセージをお願いします。

いろんなことにチャレンジして欲しい、とはよく言われますが、短期的な成果ばかりを目指すのではなく、地球レベル、太陽系レベル、銀河系レベルまで視野を広げて、未来の人類のために何ができるのか、という視座でチャレンジしてもいいと思います。とは言うものの、身近に感じた疑問とか、目の前の問題に対し、どうやったら解決できるか、ということを常に考え続けることが大事であり、その積み重ねが皆さんの未来につながるのではないでしょうか。

 

編集後記

本インタビューを通じて、谷口さんの情熱とビジョンが鮮明に浮かび上がりました。地域への深い愛情と持続可能なビジネスモデルへのこだわりは、未来の起業家たちに大いに刺激を与えることでしょう。彼の壮大なビジョンと具体的な行動力に、これからも注目していきたいと思います。(コミュニティーマネージャー 佐々木浩二(株式会社CCイノベーション))

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