あぢの郷とは

「あぢの郷」の物語

鴨池観察館提供
石川県加賀市は、白山連峰の麓に広がる自然豊かな地域です。西日本の中でもハクチョウやガンなどの渡り鳥が越冬する一大拠点として知られていますが、とりわけ人々の暮らしとの結びつきが深いのが、万葉集の時代から“あぢ”の名で親しまれてきた小さなカモたち。美味しいことから「味」の名が付いたという説もありますが、魚のアジや花のアジサイと同じく、「小さな生きものが元気に群れ集まる様子」を表す古語の「あぢ」が語源とも言われています。ハトほどの大きさの、まるで水辺の妖精のような“あぢ”は英語圏では“Teal(ティール)”と呼ばれ、青緑色の色名にもなっています。
「いつも安心、みんなしあわせ」の願いをこめて

小さな体で長い渡りの旅をするあぢは、冬の田んぼで落穂などを食べて暮らしています、春が近づくと遠くは北極圏までの長旅が待っています。加賀の田んぼで力を蓄えなくては命も尽きてしまうことでしょう。命の糧となる食の安心と環境への配慮から、農薬や化学肥料を可能な限り使わず、やむを得ず使う農薬も厳しい安全基準で選ぶ農法にこだわり、田植えの季節から水辺の生きものや四季の野鳥たちの姿と共に育みたい。そんな願いをこめた加賀市の共生農業を表す言葉として、「あぢの郷」と名付けました。
あぢの郷 加賀で出あえる “ティール” たち

コガモ
"Common Teal"
最も普通に見られる種類で、都市の川や池などにも現れます。オスは「ピリッ、ピリッ」という高く澄んだ声で鳴きます。

トモエガモ
"Baikal Teal"
世界的にも希少な種ですが、加賀市は国内で最大の越冬地です。かつて加賀で「あぢ」といえば本種を指しました。

シマアジ
"Garganey Teal"
日本より南の国で越冬するため。晩春と秋口の年に2回、姿を見せる旅鳥です。「あぢ」の古名を今も残す貴重な存在です。
人の営みと水鳥たちの関わり

鴨池観察館提供
餌の取りやすさや、外敵から身を守るために水鳥は水のある田を好みます。そのため、「冬季湛水」を実施する農家も増えています。

鴨池観察館提供
江戸時代から続く坂網猟は、夕暮れ時、餌を求めて飛び立つ鴨を待ち構え、Y字型の網を投げ上げて捕獲する鴨猟です。
生息地を守りつつ自然からの恵みを活用する持続可能な猟として、国際的にも高く評価されている伝統猟法です。
水鳥の楽園・加賀市の北西部にはラムサール条約登録湿地の片野鴨池があり、鴨池観察館では四季を通じて様々な野鳥を観察できます。
今後、市内のより多くの農地に、野鳥が飛来しやすい場所となる様、保全活動を展開しています。


鴨池観察館提供
関連リンク
この記事に関するお問い合わせ先
こちらのページも見ています
更新日:2024年03月22日