加賀市加賀東谷伝統的建造物群保存地区
保存地区の概要
保存地区の名称
加賀市加賀東谷伝統的建造物群保存地区
(かがしかがひがしたにでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)
所在地
加賀市山中温泉荒谷町、山中温泉今立町、山中温泉大土町、山中温泉杉水町の各一部
選定年月日
伝統的建造物群保存地区選定:平成23年4月1日
重要伝統的建造物群保存地区選定:平成23年11月29日
選定理由
<重要伝統的建造物群保存地区選定基準>
伝統的建造物群保存地区を形成している区域のうち次の各号の一に該当するもの
1.伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
2.伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの
3.伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの
上記のうち、「3.伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの」に該当しています。
面積
種類
山村集落
特定物件の件数
建造物136、工作物243、環境物件58 計437件
保存地区の特性
集落の空間構造
加賀東谷地区は、荒谷町・今立町・大土町・杉水町の四集落から構成されています。この四つの集落は、周囲を取り巻く急峻な山並みや崖地など、それぞれの立地地形が異なるため、規模や形態、山や川との繋がりなどで各集落に違いがみられます。敷地の形状は、地形を優先してつくられ、近代以降に整備されてきた主軸となる道路沿いなどでは短冊形のところがみられるものの、とくに一定の規模や形状になっていません。そうした敷地や田畑の境界は簡単な石積みや水路などでつくられています。谷筋の沢から引いた用水は、敷地や田畑を結ぶようにつくられた水路網に流しています。限られた平坦な地形に合わせて屋敷地と田畑が配置され、それらには明確な境界を設けられず、混然と一体化した空間を形成しています。さらに周囲は豊かな山林で包まれており、斜面や棚地にあるスギの植林地はかつての薙畑地でした。つまり、四つの集落は立地地形に基づいた独自性を有しながらも、強い計画性や規則性がみられない宅地や田畑、それらの周囲の山、川、森林という基本的な空間構造では共通しています。
近代における生業の盛衰や社会基盤の整備に伴い、加賀東谷地区の集落景観は少しずつ変容してきました。しかし、これは山間部にある集落が明治・大正・昭和という各時期の体制・社会・経済に対応してきた結果です。つまり、山間部における近代的展開の一面を示しているといえ、現在の加賀東谷地区の集落景観は、近代化の帰結と位置づけることができます。
建築物の特性
加賀東谷地区の主屋は、基本的に加賀I型と呼ばれる農家型の平面形式です。構造形式は、二階建、切妻造、妻入、四面庇付を基本とし、屋根は桟瓦葺で、煙出しを設けることが特徴といえます。近世以来のものは土間であるニワを備えていましたが、近代を通じて主流はニワを省略する形式へと移りかわりました。こうした平面形式の推移は、茅葺平屋建が瓦葺二階建に改造された主屋が物語るように、平屋建から二階建へという構造形式の変化と一連で進展していきました。主屋の近代的な展開は、ひとつの集落で完結するのではなく、四つの集落全体に通じています。また整った座敷飾りを具備すること、柱や差物に上質の材を用いること、部材をベンガラ塗とすること、オエは漆塗仕上げとすること、飾り瓦など豊かな装飾細部を備えることなども、近代に獲得した建築的特徴といえます。
加賀東谷地区の主屋を概観し、さらに平面形式や構造形式を合わせてみれば、全体として均等かつ均質といえ、その中で内部意匠などによって個性を出しています。しかし、富の集積や権力の集中などにより、規模や質で主屋に極端な差が生まれることが多い都市部や平野部の農村に比べると、加賀東谷地区の主屋は、伝統的建造物の群としての特性といえるでしょう。このように、加賀東谷地区は瓦葺ニ階建の主屋や土蔵等の伝統的建造物群で構成されていますが、このこと自体、これまでに選定された山村集落の保存地区にない特徴です。つまり、加賀東谷地区の伝統的建造物、特に主屋は近世の伝統的な形式が近代的に発展した類型と位置づけられ、民家史においても高い意義があるといえます。
一方付属屋には、土蔵や納屋などがみられます。加賀東谷地区では主屋と別に建てられ、渡り廊下などで連続しているものもほとんどありません。主屋との位置関係はとくに規則性がなく、むしろ敷地内の環境によって建てられる位置が決められたと思われます。
現状変更許可申請について
重伝建地区内において、現状を変えるなど歴史的風致の保存に影響を与える行為を行う場合は、「加賀市伝統的建造物群保存地区保存条例」に基づき、必ず現状変更の許可申請を市に提出し、許可基準に合致しているか審査を受ける必要があります。
関連ファイル
伝統的建造物群保存地区制度 補助金に関するガイドライン(PDFファイル:1.4MB)
重要伝統的建造物群保存地区に転入される方々へ(PDFファイル:660.8KB)
特定物件:伝統的建造物(建築物)の位置図(PDFファイル:4.5MB)
特定物件:伝統的建造物(工作物)の位置図(PDFファイル:1.4MB)
加賀市加賀東谷伝統的建造物群保存地区保存計画(PDFファイル:511.7KB)
伝建地区に訪れる皆様へのお願い
重伝建地区内は、住民が日常生活を送っている大切な場所です。個人の敷地や田畑、あぜ道への無断立ち入り、家の中を覗く行為、無断で戸を開ける行為は、絶対におやめください。
皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
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更新日:2024年10月09日